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確かにこの法案の実効性をあげるためには現場が動かなくてはどうにもならない。
しかし、金融庁が返済猶予等について適切な相談や助言を行っているかのチェックについて即現場への人事考課を前面に打ち出すのは多少行き過ぎのきらいがある。
銀行という組織の中でトップをはじめ経営者がその方針をきちんと述べ、内部規定や組織の確立をすることが大事で、現場の人事そのものに直接金融庁自身が介入するのは本末転倒である。
組織全体の意識改革そのものが求められ、それを指導すべきである。それよりも銀行の人事に改革を求めるならば、旧態依然たる人事システムにそのメスを入れなければ「仏作って魂入れず」の弊害のみ残ってしまう。
銀行業界はズバリいって、経営の合理化・草新化・国際化が進展している産業界において改革が最も後れた業界の一つといえる。
その最大の要因は、旧態依然とした人事システムにある。
銀行人事の特色は終身雇用、年功序列、減点主義であり、それが組織全体に長い間染み付いている。
「個性ある創造力のある人材を求める」という新卒者の募集のキャッチフレーズは上辺だけの人寄せの手段にすぎない。
きつい就職活動や厳しい入社試験を経て運よく入行した新卒者を待っているのは、人事部による均一な教育である。
その代表的なケースが行内資格制度に沿った各種の段階ごとの専門知識の習得や公的資格等の受験である。
こうした研修制度が入行後4、5年続ノ\と多くの銀行員は、仔羊のごとき存在に変化させられてしまう。
その過程の中で積極的な人物は排除され、すべてが本部あるいは支店長の意のままに動く人間に変身させられる。
その背景にあるのが「減点主義」である。
一度大きな失敗をすると、それが減点となって退行時まで影響し、次のステップになかなか上がれないシステムである。
そのため銀行員はどうしても抑え目に消極的な姿勢になってしまう。
こうした人事システムの中で、銀行では出世のステップを一応職務とは分離して資格制度を併用して行っているが、多くの銀行では依然として人事部による人事部のための人事が平然として横行している。
その一例が支店長起用等の昇格人事である。
支店長起用に当たっては、現場の副支店長からの抜擢昇格よりもまず人事部所属の資格者が第一次選抜組のトップとして起用される。
いわゆる「お手盛り人事」である。
その上こうした人達の多くは、とかく顧客との間にトラブルの発生しがちな地域の問題店舗には起用されずにごく無難な店舗に配置される。
そして1、2カ店勤務の後再び人事部に部長なり副部長として出戻ってくるのである。
こうした出戻り人事の弊害は極めて長期間にわたるため、1人や2人の人間が銀行の大事な人材の評価・判断を下すことになる。
したがって彼らに快く思われていない人達は昇給や昇格の時、同期生よりも一歩も二歩も遅れることがよくある。
そして彼らは行内で自分達の権力を誇示する。
ここに古くして新しい銀行が自らでは改革できない人事システムがある。
こうしたシステムは、優秀な人材は成果主義を謳っている外資系金融機関のスカウトの的にされ、折角金と時間をかけて育てた人材を外資系にさらわれてしまう結果にもなる。
そうした際にも当の人事部は反省せず「彼はうちの銀行の水に合わないから」等と自己弁護や保身に走る。
そこには人を見る目のなさの反省や人を育てる楽しみや生きがい等はない。
この人事システムの弊害は、バブル期に各銀行でよく行われた営業店の「目標必達主義」と微妙に結びついている。
現場を預かる支店長は、顧客の立場よりもまず自分の店に与えられた各営業目標を達成することが求められる。
それが即自分の人事の処遇、部下の昇格等に反映されるからである。
特にその時の営業本部長が人事部と結託して行った営業政策こそバブル期の大きな問題点であった。
バブルの時の地上げ屋融資やビル建設、あるいはゴルフ会員権の売買等によってその効果は如何なく発揮されたのである。
会長や頭取が理事長や理事をしている新設ゴルフ場の開設に当たって、そのゴルフ場の会員権を一番多く売りさばいた店の支店長が役員に抜擢されるなどはごく当たり前の人事であった。
日夜中小企業の経営相談や指導に力を注いでいる支店長などは全く見向きもされなかったのである。
顧客のため、中小企業の発展のために役に立ちたいと多くの誠実な銀行員は心から望み、それを着実に実行している人達も多い。
そして彼らの努力に報いる公平なる現場のための人事システムの開発が今まさに求められているのだ。
銀行界でよくいわれることだが、「お客様に人気のある支店長」「部下に人望があり、統率力のある副支店長」等が、顧客の期待に反して出世街道を歩めないのは、こうした内部事情があるからである。
銀行経営の改革は、返済猶予法案の実効性をあげるためにも、まず人事改革が第一といえよう。
それが結局は「顧客のため」「中小企業のため」になることを指導官庁である金融庁等はもっと認識してほしいものだ。
中小企業経営者に対する連帯保証制度の見直しを-借り手である中小企業にとって不満なのは,企業規模・取引規模の大小に関係なく誠意を持って融資の相談や経営のアドバイスをしてくれないということだ。
また、企業自身の知名度やブランド名によって企業内容の調査以前に取引を不公平に扱われているという不満も多い。
銀行業のルーツは両替商である。
金を貸したり、両替したりする業務は遠く古代バビロニア時代からあった。
中世では12世紀当時世界の貿易や文化の中心地であった北イタリアを中心として発展してきた都市国家での両替商である。
各国の通貨を両替したり、あるいは預金を受け入れ、貸付をしたりしたのが発祥といわれている。
ちなみに両替商が使用した机(BANCO)が銀行の語源でもある。
このように銀行のルーツは預ける人、貸し出される人、そして両替に来る人からの信頼によって成り立っている「信頼産業」である。
その信頼こそが商売の原点である。
そうした面で貸し手側の有利な立場を利用しての取引に当たっての不公平な取り扱いは厳に慎まなければならない。
銀行によって特に目に付くことは、企業規模や取引規模に応じて取引に対して不公平な取り扱いをし、貸付条件等で著しく差別することにある。
大企業・中堅企業と比較して中小企業の場合、借入の際不利な立場に立たされることが多い。
その一例が、貸し出しに当たって中小企業に対しては必ず社長個人が企業の借入の際連帯保証人になることが慣習化されていることであろう。
大企業や中堅企業の銀行取引に当たっては、彼らの経営形態は、経営と資本とが分離しているところも多く、かつオーナー経営者が少ない。
また役員をはじめ代表者は役員定年制もあり、また任期を終えると退任するケースが一般的である。
そしてその信用力・ブランド名・知名度等から企業自体の信用が前面に出され、代表者個人が連帯保証人になることを求めるケースは極めて少ない。
また仮に銀行側が社長交代の都度新社長に連帯保証人となることを求めようものなら一喝されて取引が中断してしまうケースもある。
これに対して中小企業の場合は、ほとんどが資本と経営とが一体化しているオーナー経営者であることからその信用力・経営資質を見込んで社長個人に連帯保証人になることを求めることが圧倒的に多い。
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